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びわでん
琵琶伝
泉 鏡花
「国民之友」1896(明治29)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,081 字 · 24 页
何でも戸外へ出すことはなりましねえ。腕ずくでも逢わせねえから、そう思ってくれさっしゃい。」
お通はわっと泣出しぬ。
伝内は眉を顰めて、
「あれ、泣かあ。いつもねえことにどうしただ。お前様婚礼の晩床入もしねえでその場ッからこっちへ追出されて、今じゃ月日も一年越、男猫も抱かないで内にばかり。敷居も跨がすなといういいつけで、吾に眼張とれというこんだから、吾ゃ、お前様の、心が思いやらるるで、見ているが辛いでの、どんなに断ろうと思ったか知ンねえけんど、今の旦那様三代めで、代々養なわれた老夫だで、横のものをば縦様にしろと謂われた処で従わなけりゃなんねえので、畏ったことは畏ったが、さてお前様がさぞ泣続けるこんだろうと、生命が縮まるように思っただ。すると案じるより産が安いで、長い間こうやって一所に居るが、お前様の断念の可いには魂消たね。思いなしか、気のせいか、段々窶れるようには見えるけんど、ついぞ膝も崩した事なし、整然として威勢がよくって、吾、はあ、ひとりでに天窓が下るだ、はてここいらは、田舎も田舎だ。どこに居た処で何の楽もねえ老夫でせえ、つまらねえこったと思って、気が滅入るに、お前様は、えらい女だ。