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いきたにんぎょう
生きた人形
小川 未明
「サンデー毎日 7巻49号」1928(昭和3)年10月28日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,925 字 · 10 页
少女は、じょうだんでなく、ほんとうに主人が相談をしましたので、自分には、願いのあることでもありますから、なにをして働くのも同じだと考えて、とうとう翌日から、この店の飾りをつとめる、生きた人形になることを承諾しました。
生きた人形が、店飾りになったといううわさが四方に広まりますと、町の人々は、みんな、一度それを見ようと前へやってきたので、この呉服店の前は、いつもにぎやかでありました。
「なかなか美人じゃないか?」
「あの、青っぽい着物が、ばかに似合っている。」
こんなように、そこに立った人々の口から交わされたのです。
「きっと、これから、生きた店飾りが流行することだろう……。」と、また空想にふけりながらゆくものもありました。
いままで、客を前に集めた人形は、ただ美しいばかりで、笑うこともなければ、動くこともなかった。どうせ、お人形だというので、見る人たちも、それを要求するものはなかったけれど、これが、生きている人間だとわかると、中には、美しい少女に向かって話しかけるものもありました。けれど、店の飾りとなっているうえは、だれとても、みだりに話してはいけないということになっていましたので、少女は、返事をしなかったのでありますが、あまりおかしいときには、ついにっこりと笑うこともありました。