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せいとしとのきろく

生と死との記録

豊島 与志雄

「帝国文学」1918(大正7)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,961 字 · 39 页

青空文庫

」

私達は大急ぎで食事を済した。

芳子も病院に行くと云い出した。私は止めた。何時出産か分らない身体だった。もう予定の日を二週間もすぎている身体だった。俥なんかに揺られるのが一番危険だった。

「近いからゆっくり歩いてゆくわ。」と芳子は云った。

私も遂に同意した。二人で家を出た。曇った晩だった。

「私もう覚悟しています。初っからいけないというような気が今度はしたんですから。」

芳子は妙に鋭い直覚を持っていた。よく種々なことを前以て云い当てることがあった。

「なに大丈夫だ!」と私は云った。「いけなかったら僕等の意志で癒してみせる。」

私達はじっと眼を据えて歩いた。

「大丈夫かい。」

「ええ。本当に思い込むと身体なんか案外どうにでもなるものですね。」

病院について、病室にはいると、室の中にはS子さんと附添看護婦とが黙って坐っていた。

私が居ない間にU氏が帰られて診察があったそうである。それから腸の洗滌が一回。嘔吐があるので、薬も一切与えられなかった。ただ時々食塩水を少しずつ唇へ垂らしてやった。堯は半ば無意識にそれを呑み込んだ。

その晩は私と芳子とがついてることにした。