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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
これに反して丹生川平の、郷民達と来た日には、生活から来る必要として、充分に馬術に達していた。曠野を自在に駆けることも、森林の中を縦横無尽に、走り廻ることも出来るのであった。
で、今も茅野雄を追い抜いて、その前方へ現われて、茅野雄の行く手を扼したのである。
こうなっては茅野雄は仕方がなかった。がむしゃらに前面の敵に向かって、切り散らして逃げるより方法がない。
しかし茅野雄は考えた。
(ここは曠野で隠れ場所がない。どこまで逃げてもまる見えだ。また追いつかれて扼されるであろう。これはどうしても林の中か、森の中へ駆け込んで、身を隠さなければ仕方がない)
で、背後を振り返って見た。
曠野を仕切って壁のように、連らなっている大森林があった。
(あの森林の中へ入ってやろう)
で、茅野雄は突嗟の間に、手綱をしぼると馬を廻し、一散に後へ引っ返した。
その行く手には馬に乗った、丹生川平の郷民達が、得物を揮って群がっていたが、駈けて来る茅野雄の必死の姿に、気を呑まれたか道をひらいた。で、茅野雄は駆け抜けた。
と、これはどうしたのであろう、ドッと背後から大勢の者の、笑う声が聞こえてきたではないか。