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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

「好奇心からでございましょうね?」

「好奇心からでございますとも」

「でも好奇心は好奇心のままで、うっちゃってお置きなさいました方が、よろしいようにございます。……好奇心は好奇心をとげた時に、値打を失うでございましょうから」

「値打を失なってしまいたいために、好奇心というものは強い力で、人間に逼るものでございますよ。好奇心は力でございます」

森林の底と云ってもよかろう。特に薄暗い所へ来た。杉だの桧だのだの欅だのの、喬木ばかりが生い茂っていて、ほとんど日の光を通さなかった。で、歩いて行く茅野雄と浪江との、姿さえぼけて見えるほどであった。

「伯父上はご立腹のようですな」

巨大な楠の木の裾を巡り、行く手に黒くよどんで見える、古沼の方へ歩きながら、こう茅野雄は苦痛らしく云った。

そういう茅野雄と肩を並べながら、足に引っかかる蔓草や落ち葉を、踏み踏み歩きながら浪江は云った。

「内陣を見られるということが、お父様にはこの上もなく、不愉快なのでございますので、それをご覧になろうとして、深夜に洞窟へ人に知らさず、こっそり行かれたあなた様を、怒っているのでございますよ」

「私にこの土地から立ち去るようにと、伯父上には今日仰せられました」