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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
とは何だろう? 要するに今の場合では、何が何だか解らない――と云うことになっているな。……山岳へおいでなさりませ、何か得られるでござりましょうと、こうあの巫女は占ってくれたが、日本の国には山が多い。どこの山へ行けというのだろう? そこまで占ってくれなかったのだから、山へ行こうにも行きようがない)
で、茅野雄は歩き出した。
と、松倉屋の邸の中から、荒々しく怒鳴る老人の声が、門扉を通して聞こえてきた。
怒号の意味は?
「……俺はお前を見損なったよ! そんな女とは知らなかった! 我儘にもほどがある! いや贅沢にもほどがある! ……大目に見て置けばよい気になって、何ということだ何ということだ! ……月々の入費の大袈裟なことは! これでは俺もたまらない! この松倉屋は潰れてしまう! ……それにお前は勝手すぎるよ! 俺の気に入らない若僧どもを、いい気になって屋敷へ入れて、悪ふざけをして平気でいる。……俺は杉次郎が大嫌いだ。まるで歌舞伎の和事師のように、色が生白くておべんちゃらで、女あつかいばかりが莫迦にうまくて、男らしいところがどこにもない。旗本の次男だということだが、あんな人間は寄せつけないがよろしい! それにお前の兄も嫌いだ。