轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

月の光が遮られて、露路の中はほとんど闇であった。そういう露路を背後にして、露路口に立っている碩寿翁の姿は、その長い髯に、頑丈な肩に、秀れた上身長に、老将軍らしい顔に、青白い月光を真っ向に浴びて、茶人とか好奇家とか大名の隠居とか、そういうおおらかの人物とは見えずに、老吸血鬼か殺人狂のように見えた。その足もとに転がっているのは、犠牲にされた京助であって、両手を握って左右へ延ばし、食いしばった口から泡を吹き半眼で空を睨んでいる。

と、碩寿翁は腰を曲げたが、手を延ばすと京助の襟上をつかみ、露路へズルズルと引っ張り込んだ。

一つの露路は二つの露路を産み、二つの露路は四つの露路を産み、この一画は細い露路によって、蜘蛛手のように織られていたが、それの一つへ投げ込まれたが最後、死人であろうと、怪我人であろうと、犬や猫のように扱われて、死人は下手人も探されず、そのままどこかへ片寄せられ、怪我人は介抱もされないのであった。

この一画は貧民窟ではあったが、また罪悪の巣でもあり、悪漢や無頼漢の根城なのでもあった。

淫祠邪教の存在地なるものは、表面人助けが行なわれるが、裡面においては惨忍極まる、悪徳が横行するものである。