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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

露路口に立っている女があった。白の行衣に高足駄をはき、胸に円鏡を光らせてかけ、手に御幣の切られたのを持って、それを頭上で左右に振って、鋭い声で喚いている。

勘解由家の当主の千賀子であった。

「返せ返せ持っている物を返せ! 久しく尋ねていた我が家の物だ! それの一つだ、返せ返せ! ……刑部殿々々々、お出合いくだされ! あなたにとっても大切の物が、見付かりましてござりますぞ! ……得体の知れない老人が、持って立ち去ろうといたします! ……お出合いくだされ、お出合いくだされ! ……あッ、切り込んで参ります! 妾は殺されそうでござります! お出合いくだされ! お助けくだされ!」

「黙れ!」と碩寿翁は叱した。

「汝こそ誰だ、不届きの女め! 拙者の持ち物を取ろうとする! ……うむ、うむ、うむ、汝もそうか! 汝もこいつを探している一人か! ……では許されぬ! 助けはしない! ……くたばれ!」と、毒々しく食らわせたが、一躍すると颯と切った。

辛くもひっ外した巫女の千賀子は、御幣を尚も頭上で振ったが、

「なんの汝に! 切られてなろうか! なんの汝に! 取られてなろうか! ……返せ返せ、我が家の物だ! ……刑部殿、刑部殿、刑部殿!」