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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

この道を参ってよろしかろうかな?」

「…………」

どうしたのか老樵夫は物を云わないで、何か物でも探るように、茅野雄の顔を見守った。

大きい眼、高い鼻、田舎者らしくない薄い唇、頬の肉がたっぷりと垂れていて、わずかではあったが品位があった。年格好は五十五六か、顔の色は赧く日に焼けていたが、かえってそれが健康そうであり、額や頤に皺はあったが、野卑なところは持っていなかった。――これが老樵夫の風貌であって、注意して観察を下したならば、単なる山間の住民などではなく、由緒ある人間だということに、感付くことが出来たであろう。

と、老樵夫は意味ありそうに笑った。

「ハッハッハッ、異いますよ」

「異う? そうか、この道ではないのか」

「へいへいこの道ではございません」

「しかしこの道が広いようだが。お城下へ通っている道とすれば、この道以外にはなさそうだが」

すると老樵夫はまた笑ったが、意味ありそうに次のように云った。

「尊いお文にございます。天国への道は細く嶮しく、地獄への道は広うござるとな。――それ、この一番狭い道が、あなた様の道でございますよ」

(何だか風変わりのことを云う爺だ。