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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

「この細い道を通って参りました」

こう云って一本の道を指した。が、その道は茅野雄の通った、細い道とは異っていた。

しかし弦四郎には解るはずがなかった。

「おおそうか、この道を行ったか」

――で、ロクロク礼も云わず、四人の部下を従えて、その細い道を先へ進んだ。

そうしてこれも長く延びた芒に、間もなく蔽われて見えなくなった。

一旦隠れた青大将が、草むらから姿を現わしたが、また道を横切って、どこへともなく行ってしまった。

風の音がサラサラと草を渡り、日がまじまじと照っていて、四辺はひっそりと物寂しい。

と、高い笑い声がした。

老樵夫が上げた笑い声であった。

「ああいう悪いお侍さんはあっちの郷へやった方がいい。あっちの郷は乱されるだろうなあ」

(どうも恐ろしく歩きにくい道だ。天国へ行く道は狭くて嶮しいと、先刻の老樵夫がお談義をしてくれたが、高山のお城下へ行く道が、こんなに歩きにくいとは思わなかった)

もう夕暮が逼って来ていた。草には重く露が下りて、脚絆を通して脚を濡らし、道の左右に繁り合っている、巨大な年老いた木々の間から、夕日が砂金のように時々こぼれた。道は思い切った爪先上りで、胸を突きそうな所さえあった。