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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
――で、右手で刀の柄を握り、拇指で鯉口をグッと切った。抜き打ちに切ろうとする足の踏み方だ、右足を一歩前へ踏み出し、左足のかかとを軽く上げ、体全体を斜めにして、刀の柄を握った上にソリを打たせて上へ上げたので、右の手の肘が矩形をなして、胸の上まで上ったのを、拍子取るように揺るがして、弦四郎の眼を睨み付けた。否と云ったならばただ一刀に、弦四郎の左の胴からかけて、胸まで割り付ける意気込みであった。握った手に余った柄頭の、金具が日の光に反射して、露が溜ってでもいるように、細かく生白く光って見えた。
(凄いの! これは! 凄い気魄だ!)
物も云わなければ動きもしないで、茅野雄の動作と言葉とへ、注意を向けていた弦四郎は、こう思わざるを得なかった。
(正当に太刀打ちをしたところで、五分と五分の勝負になろう。小枝などを抱えていて、片手でうかうかあしらおうものなら、こっちがあぶない、仕止められるであろう。言葉をもって云いくるめようとしても、眩まされるような人物でもない。彼の云う通り小枝を放して、丹生川平へ逃げ帰るか、ないしは真剣に切り合うより、他に手段はなさそうだ。どっちにしても困ったものだ)