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しょうがいのかきね

生涯の垣根

室生 犀星

「新潮」1953(昭和28)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,267 字 · 22 页

青空文庫

に息苦しいものが喘ぎながら見えていた。樹木というものから悲しみをおぼえるということは、その形からでは容易にくみとれないものだ、しかしここにある乱立相鬩いでいる松どもは、淋漓たる悲しいものを人間から与えられていないものはない、普通の樹木に決して見られない人くさいものが、立派な形の奥の方で悶えているのだ、この悶えのつらいものほど美しい形をととのえて迫っていた。

「まるでこりゃ芸者だね。」

「どうして芸者に見えるんです。」

「さんざ吊られてさ、そのあげくまた売られてしまうとこなぞ、よく似ている。」

「苦しめられて休む間がないんですよ、しじゅう根は切られていてそいつが治る間がないんだ。」

「幹のいろがもう老年だ、しかも変にそだった年寄だね。」

ここで二本とか三本とか組み合っている松に、しるしをつけて買い入れた、蔽いかぶさっているものには、それを受けとどめるような形の松をえらび、さらに一本きりで立たなければならない松には、裏にも表にも、見どころのあるものをえらんだ。

「松をいじくればもうあとに、何もないな。」

「行きどまりですよ。」

おもちゃはここで絶えていた。翌日から彼と民さんとは、二十何本かの松を植え込み、曇り日にはゆううつな暗緑のかたまりを、庭のまわりに眺めた。