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しょうがいのかきね
生涯の垣根
室生 犀星
「新潮」1953(昭和28)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,267 字 · 22 页
」
一年に一本くらい枯れて行ったから、十五年間には十五本枯れたことに、なっていた。かれはまた柘榴、柚子、紅梅、……ずいぶん枯れてしまいましたね、柏、杏、柿、いたや、なぞはまるで見ちがえるように、枝にも瘤がついて大した木にふとっていますな、時時、ひょんなしごとをやっていて、ふいにお宅の庭のことを人にもはなしたり自分でもおもい出したりしていましたが、あの時分は木がやすくてすぐに手にはいったが当節では庭を作るということも、家を建てるよりかもっとかかりますね、しかしあの大きい松だけたすかっているのは、全くの拾い物ですね、よかったですな、かれはそういうと百年くらいの松をくるまで搬んだ時の苦心と、町家の間を引いて来るのに困ったと言った。その時、裏門から音のしないように這入って来た息子の秋彦は、おやじの眼を趁うて木の間、垣根の際などをことさらに尊敬しなければならないような眼附をして、ながめた。彼はこんな眼を庭の中で他人から見られたことは、今までになかった。