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しょうがいのかきね

生涯の垣根

室生 犀星

「新潮」1953(昭和28)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,267 字 · 22 页

青空文庫

きんたまは、昼すぎの斜めの日にうかんで、いろは白かった。きんたまにも、白いのもあり黒いのもあることを知ったが、この男のぽかんとした放心状態のなかから下っているきんたまは、やさしいなりをしていた。彼はお三時の茶を植木やと一緒にしながら言った。

「君のきんたまは白いね。」

「旦那はいつそれを見たんです。」

「先刻、納屋の前で見た。なぜあそこで小便をした。」

「済みません。」

「しかし君にも似合わない色白なきんたまを持っているね。」

「あはは、こいつあ遣られた。」

「おれはね、きんたまという奴はみんな黒いもんだと思いこんでいた、ところがそうじゃない。」

「はは、よくそんなに見なすったものだ。」

「僅かな時間でも大切なものはよく見とどけられるものだよ。」

民さんに二番目の男の子ができた時、彼は名附親になりうんと気取って、秋彦という名前をつけてやった。他人の子供に名前をつけたのがはじめてだった。民さんは植木屋の夏がれどきに八百屋をやり、貸シが多くなりもだもだのあげく、長屋のお内儀さんの顔をぶん殴り、その場で巡査につかまって留置場にほうり込まれた。民さんのお内儀さんが来てたすけてくれといい、彼は海岸にある大森警察署に行って、請人の印形を捺してこの男が鉄柵の中から出てくるのを迎えた。