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しょうがいのかきね
生涯の垣根
室生 犀星
「新潮」1953(昭和28)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,267 字 · 22 页
地下足袋のうらには、じごくのようながじがじした、いやらしい蛇腹文様があって、土にくい込み、土を一どきにきざんでしまうからである。
彼がはじめてこの土地に家を建てた時に、民さんという男をつかっていたが、どうにも怠け者で朝出の時間が喰い違ったり、不意に休んだりするので我慢ができなくなり、納得ずくで別れた。君が来てくれない日はこちらでも仕事に手がつかずに、一日をふいにしてしまう、君ももう判っているだろうから別れようじゃないかということになり、民さんも済みませんと素直にそういい出入りしなくなった。それから十何年かが経ったが、その後、この男が夢の中にあらわれたことは何十度だか分らない、庭手入れのたびに民さんのことがしじゅう頭にあった。はじめて家を建て、庭を作った時の男だから彼には女のようにわすられなかったのである。女でもこうはゆくまいと思われるくらいだ、ほとんど最初二三年のあら庭の時代には、毎日民さんとあい、木の事、石の事、下草の事をはなし合い、意見をまじえて庭作りをやった。民さんの生あたたかい小便をしているうしろから、どうかしたはずみに、きんたまを見たことがあった。