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たはらしのはんざい

田原氏の犯罪

豊島 与志雄

「黒潮」1917(大正6)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 57 页

青空文庫

」

「僕は酒は飲めないんだよ。」と良助は答えた。

「なに飲めない?……ああそうか。学校へ行ってるうちは飲まないがいいや。脳に悪いんだな。では※でも食うがいい。※は目出度え肴なんだ。おいみよ、お前も食えよ。」

良助はそれで※をつまんだ。徳蔵は、冷酒を貪るようにして飲んだ。

やがて良助は云い出した。

「父さんは毎晩酒を飲むのかい。」

「馬鹿なことを云っちゃいけねえ。飲みてえのは毎晩飲みてえんだが、誰も飲ましてくれねえやね。」

「でもよく飲むんだろう。」

「当り前だ。酒も飲めなくなったら世の中はおしまいだ。」

「だが旦那様もそう云っていられたよ、酒を飲めば世の中はおしまいだって。」

「酒を飲めば世の中はおしまいだと?」

「ああ、」と答えたが、良助は一寸考えた。それからまた云った。「父さんは死にたいのかね。」

「何を云うんだ箆棒な。誰が死にてえ奴があるもんか。」

「でも何だよ、酒を飲み過すのは自殺をすると同じことだそうだ。度を過すと酒は屹度人の命を縮めるそうだ。それからまた実際死ななくても、始終酒ばかり飲んで何にも出来ないようになるのは、死んだも同じだそうだ。旦那様がよく云ってくれってそう仰言っていらしたよ。