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たざきそううんとそのこ

田崎草雲とその子

吉川 英治

「文藝春秋 夏期増刊号」1932(昭和7)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,568 字 · 40 页

青空文庫

見せれば、梅渓よりも、兄弟たちの方から、

『そんな女は、梅渓には不向きだ、出て行け』

と、代筆の離縁状が、出かねない。

その日は、四人兄弟が、四人づれで出て、

『梅渓、面白いことがある、ちょっと外まで』

と、例によって、誘い出した。

なにかと思うと、神田の和泉橋に、辻斬が出る。辻斬はめずらしくないが、ひどく達者ものらしいから、逆に、辻斬を辻斬しようという。

『よかろう。誰が斬る』

俺が、俺が、で兄弟喧嘩が始まりそうだった。結局、酔っぱらいが一人、斬り手一名、後詰三人と役割をつけて、籤をひいた。酔っぱらいの役が梅渓に、斬り手が末の文蔵に当った。

郡代横丁の居酒屋で飲んで、やがて、和泉橋へ出かけてゆく。梅渓は、わざと足どりを千鳥にして、辻斬を釣る空ッぽの折詰をぶらぶらさせた。狐、浅ましくも引っかかった。お誂えの黒いでだち、ばすッと、鍔音を感じたので、梅渓は、

『おいでなすッた』

と、呶鳴って、抜き打ちに後ろを撲った。

斬り役の文蔵は、梅渓が先を越したので、

『約束が違うッ』

と、不平をいいながら、長刀で、後ろ袈裟にあびせた。後詰の三名もたまらなくなって、

『俺にも斬らせろ』