轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まちのてんぼう

町の展望

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,428 字 · 6 页

青空文庫

物干しの上は風当りが強いが太鼓はそのまま、傍の小窓の敷居を跨いで先ず太鼓叩きが中へ入った。つづいて、クラリネットを片手に下げ、縞の羽織の裾をまくって

「うう寒い」

ひょいと窓へ吸い込まれて仕舞った。――然し音楽は消えたのではない。赤い爪革、メリンス羽織、休み日の娘が歌う色彩の音楽は一際高く青空の下に放散されて居る。――

町の人々はもう馴れっこに成ってしまったのだろう。よそから来た者の心に、これ等の常ならぬ町の光景は何か可憐な思いを伴って感じられた。夕方同じ町を歩いて見ると、昼間の色と動きは何処にもない。町は暗い。娘共はもうみんな何処へか帰って仕舞った。海辺で桃色の貝どもが、いつの間にか穴にかくれて仕舞ったような淋しさだ。

宿屋は古風で、座敷の真中に炬燵が切ってある。私共はその炬燵の上で夕飯を終ったばかり。日のある間急しく雪解の水のむせび流れて居た樋も今は静かで、小さい町の暗さが襖の際まで迫って来るようだ。其日の新聞を読んで居ると、隣りの室で急に電話のベルが鳴った。

「あ、もしもし、下諏訪の二十九番」

女の声だ。

「一力さんですか、すみませんがお鶴姉さん手があいてましたら電話口へおよび下さいな」