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まちのしんり

町の真理

小川 未明

「帝国教育 589号」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,120 字 · 7 页

青空文庫

博物館

うらめしそうに、B坊は、しばらく、飛び去ってしまったせみの行方を見守っていました。

そのとき、もち棒を持ったA坊が、息をきらしながら、あちらから駆けてきました。

「Bちゃん、せみはいる?」と、遠くから、こちらを見て叫びました。B坊は、なんとなく、すまなそうな顔つきをして、頭をふり、

「逃げてしまった。」と、答えました。

「うそだ! 君が、逃がしたのだろう……。」と、A坊は、すぐ、そばにくると難題をいいかけました。

「僕が、逃がしたのではないよ。」と、B坊は、あまりのA坊の邪推に、不平を抱きました。

「君は、番をしているといったじゃないか?」

B坊は、たしかにそういったから、だまっていました。

「君は、番をしているといったろう。このうそつき!」

こういって、A坊は、B坊をなぐったのです。

――話はこういうのでした。さあ、どちらに真理がありましょう?

博物館

「ねえ、叔父さん、上野へまいりましょう。」と、学生がいいました。

もう、秋で、上野の山には、いろいろの展覧会がありました。

「そうだな、天気がいいから、いってみようか。」

二人は、家を出かけました。そして、電車を降りて、石段を上がり、桜の木の下を歩いて、動物園の方へきかかりました。