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まちのしんり

町の真理

小川 未明

「帝国教育 589号」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,120 字 · 7 页

青空文庫

せみ

せみ

B坊が、だれかにいじめられて、路の上で泣いていました。

「どうしたの?」と、わけをきくと、こうなのであります。

A坊と、B坊は、いっしょに遊んでいたのです。すると、みんみんぜみが飛んできて、頭の上の枝に止まりました。

二人は、家に走っていって、もち棒を持ってこようとしました。すると、日ごろから、強い、わんぱく子のA坊が、

「これは、僕のせみだから逃がしちゃいけないよ。番をしていておくれ。」と、命ずるように、B坊に向かっていいました。

「清水良雄《しみずよしお》・絵《え》」のキャプション付きの図

清水良雄・絵

気の弱いB坊は、たとえ内心では、それを無理と感じても、だまって、うなずくよりほかはなかったのです。

「どうか、Aちゃんのくるまで、みんみんぜみが、逃げてくれなければいいが……。」と、B坊は、心配していました。なぜなら、もし、せみが、逃げたら、きっとA坊は、自分のせいにすると思ったから。

B坊は、上を向いて、せみを見守りながら、身動きもせず、じっとしていました。せみは、つづけて、ミン、ミン、ミン――と鳴きました。そして、鳴きやむと、思い出したように、遠方を目がけて、飛び去ってしまいました。