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たたまれたまち

畳まれた町

国枝 史郎

「サンデー毎日」1927(昭和2)年7月17日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,340 字 · 7 页

青空文庫

そうしてぶらんこが出来ている。花! 満開! 美しいことよ! 昼顔、木苺、百合、蘭、……駒鳥が葉蔭へ巣をかけている。啄木鳥が椋の木をつついている。四十雀が枝をくぐっている。閑古鳥が木の股で啼いている。そうして池には蛙がいる。おはぐろとんぼが舞っている。鴨の親子とあひるとが、それの水際に羽搏いている。蝶の飛んでいるのはいうまでもない。だが草の間を辷るように、いたちが走って行ったのは、少し不似合といわなければなるまい。

蜜蜂! とかげ! 甲虫! てんとう虫に紙切虫! そんな物まで巣食っている。大木には蔦が青々と萌え、切株をとりまいて歯朶が生えている。毛虫だっているのである。そうして薊の葉の蔭に、狸が眼を開けているのである。

大人といえば三人しかいない。

水車小屋にいる一人の爺さん。木を伐っている二人の木樵。

後は揃って子供である。

シーソーに乗っている坊ちゃんと嬢さん。手網を振廻している悪戯児。ぶらんこを揺すっている洋服の娘。小さい滝の岸に座って、手を延ばしている七八歳の少女――その手の先には水蓮がある。何かしらわめいているエプロンの小娘。生捕った小魚の尾尻を摘んで、瓶へ入れている麦藁帽子の少年。