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ぎわく
疑惑
江戸川 乱歩
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 37 页
「五十だ、君はきっと、その年でと審しく思うだろうね。実際親父はもう、半分位気が違っていたのかも知れない。若い時分からの女と酒の毒でね。……夜など、何の気なしに家に帰って、玄関の格子を開けると、そこの障子に、箒を振り上げて、仁王立ちになっている兄貴の影がうつっていたりするのだ。ハッとして立ちすくんでいると、ガラガラというひどい音がして、提燈の箱が、障子をつき抜けて飛んで来る。親父が投げつけたんだ。こんなあさましい親子が、どこの世界にある……」
「…………」
「兄貴は、君も知っていた通り、毎日横浜へ通って、○○会社の通訳係をやっているんだが、気の毒だよ、縁談があっても、親父の為にまとまらないのだ。そうかといって、別居する勇気もない、みじめな母親を見捨てて行く気には、どうしてもなれないというのだ。三十近い兄貴が、親父ととっ組あったりするといったら、君にはおかしく聞えるかも知れないが、兄貴の心持になって見ると、実際無理もないんだよ」
「ひどいんだねえ」
「おとといの晩だったて、そうだ。親父は珍しくどこへも出ないで、その代りに朝起きるとから、もう酒だ。一日中ぐずぐず管をまいていたらしいのだが、夜十時頃になって、母親が余りのことに、少しおかんをおくらすと、それからあばれ出してね。