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ふうてんろうじんにっき
瘋癲老人日記
谷崎 潤一郎
「中央公論」中央公論社、1961(昭和36)年11月~1962(昭和37)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,490 字 · 196 页
四月中旬になってから、好天気の日には庭を二三十分ぐらい散歩するようになった。
大概看護婦がお供をしたが、稀には颯子が手を曳いていることもあった。
嘗て拵えてやると約束をしたプールの工事がもうその頃始まって、庭の芝生が掘り返されていた。
「拵えたって無駄だわよ、どうせ夏になればお爺ちゃんは日中に戸外へなんぞ出られやしないわ、無駄な費用だから止めた方がいゝわ」
と、颯子が云うと、浄吉が云った。
「約束通りプールの工事が始まっているのを、眺めるだけでも親父の頭にはいろ/\な空想が浮ぶんだよ。子供達も楽しみにしているしね」