轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しろいあさ
白い朝
豊島 与志雄
――「正夫の童話」――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,920 字 · 35 页
あの文句は、恐らく、父が死ぬ少し前あたりに、書かれたものでしょう。父は愛読した書物のなかに、符牒のような文句を、いくつも書いています。もう四五年前のことで、はっきり覚えていませんが、父はあの頃、ギリシャ神話をしきりに読んでいました。その神話の或る書物の欄外に、あの文句が書きつけてあるのです。ミダス王の驢馬の耳の話のところです。
芝田さんを明朗な性格の人だと、父は思っていたのでしょう。それはそれにちがいありません。ところが、その明朗な性格が、あの物語と、どういう関係があるのでしょう。ミダス王とでしょうか、その愚かな耳とでしょうか、その異様な長い耳とでしょうか、その秘密を知った理髪師とでしょうか、秘密を穴のなかに囁きこんだこととでしょうか。謎のようなものです。もしかすると、全く逆に、愚かでない耳とか、秘密を持たない理髪師とかは、明朗だというのかも知れません。
正夫はそっと、駒井さんにたずねました。
「ねえ、神話の、ミダス王の話、あれを知ってるの。」
駒井さんは、泣いてる眼で微笑みました。
「ミダス王の驢馬の耳と、理髪師の話、あれですよ。」
「知ってるわ。