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しろいみち
白い道
徳永 直
「新潮」1948(昭和23)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页
ああ、普選運動がやっと……」
それを、さえぎろうとして古藤の早口が、
「――理、理想じゃないですよ。げ、げ、現実ですよ。東、東京の労働者……。ア、ア、アナ、アナルコサンジカリズムなんか……」
と、やっきになっているけれど、彼はひどい吃りなので、すぐ何倍も大きな高坂の声にかきけされてしまった。
「――だからさ、だからわしは、小野がいるときから、アナだの何だの、支持したこたァないよ。そうでしょう、そうですとも。だいたい諸君は、わしのことをダラ幹だの、女郎派だのというけれどだネ、しかしだネ、じっさい労働者というもんは……」
硝子戸がガタ、ガタッとあいて、怒った古藤がとびだしてきた。そして入口でせわしく下駄をつっかけると、すぐ近所の自分の下宿へ、庭づたいにかけだしていった。
「――理想はよろしい。アナでも、ボルでもけっこう。だからわしはポスターでも、会場費でも何でも提供している。しかしだね、諸君は学生だ、いいですか、いわば親のすねかじりだ。いや怒っちゃいけませんよ、しかしだネ、いざといって、諸君に何か……」
さいごに、おとなしい福原も、だまって外へ出ていった。