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しろいみち

白い道

徳永 直

「新潮」1948(昭和23)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页

青空文庫

――。

わらい声の一つをききつけて、三吉はハッとする。おぼえのあるわらい声は思いがけなくまじかで、もう顔をそらすひまもなかった。流れのなかをいくらかめだつたかい背の白浴衣地がまむかいにきて、視線があったとたん、ややあかっぽい頭髪がうつむいた。

――すれちがうとき、女はつれの小娘に肩をぶっつけるようにしてまた笑い声をたてた。ひびく声であった。三吉は橋の袂までいって、すぐあと戻りした。流れのはやさと一緒になって坂をのぼり、熊本城の石垣をめぐって、田甫に沿うた土堤うえの道路にでる。途中で流れはいくつにもくずれていって、そのへんで人影は少くなった。土堤の斜面はひかげがこくなり、花をつけた露草がいっぱいにしげっている。

つれの、桃色の腰巻をたらして、裾ばしょりしている小娘の方が、ときどきふりかえって三吉の方をにらむ。くろい、あごのしゃくれた小さい顔は、あらわに敵意をみせていた。女は一度もふりむかないけれど、うしろを意識している気ぶりは、うしろ姿のどこにもあらわれている。裾をけひらくような特徴のある歩き方、紅と紫のあわせ帯をしているすらッとした腰のへん。ときどきつれの小娘に肩をよせてから前こごみになってひびかせる笑い声が、三吉をあわてさせるのであるが、そしてきょうもとうとう土堤道のある地点にくるまで、声をかけるどころか