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しろいくも

白い雲

小川 未明

「お話の木」1937(昭和12)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,755 字 · 16 页

青空文庫

「やあ、やあ。」と、先生には聞こえないように、掛け声をかけて、丹下左膳と侍に立ちまわりをさせていました。場所の近いものは、笑いを殺して見ていました。敏ちゃんは、先生にわかると思ったから、気が気でなかったので、

「見つかるよ。」と、小山に、注意をしました。

しかし、もうこのときは、遅かったのです。先生は、小山をにらんでいらっしゃいました。ふいに、先生がお黙りになったので、小山が、顔を上げてみると、ほとんど、いっしょに、

「小山、さっきからおまえはなにをしている? わかっているかね、塩原温泉はどこにあるか、いってごらん。」と、先生は、小山をお指しになりました。

小山は、片手に、磁石と紙を握って、机の下へ隠すようにして、立ち上がりました。

「栃木県にあります。」

「じゃ、群馬県にある、有名な温泉場は?」と、先生は、お問いになりました。

今度は、よく聞いていなかったので、小山は、ちょっと返事ができませんでした。このとき、二、三人席をへだてて、平常からおもしろいことをいって、人を笑わせる武田が、小さい声で、

「どっこいしょ。」といいました。

これをきいたものが、笑い出すと、先生は、怖ろしい目を武田の方へ向けて、おにらみになりました。