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はくもくれん

白木蓮

豊島 与志雄

「芸術」1947(昭和22)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 24 页

青空文庫

「梶山さん、ほんとに喜美ちゃんが好きなの。」

「うん、好きだよ。」

「どんな風に好きなの。」

「どんな風って……別に愛してるわけじゃないが、ただ好きだよ。本当のことを言えば、喜美ちゃんを見てると、今にたいへん不幸なことが喜美ちゃんに起りそうで、なんだか、胸が切なくなる……そんな風でね……。」

「それ、ほんとなの。」

桃代は私によりかかるようにして、そして突然、すすり泣くのだ。私はびっくりして、彼女の肩をかかえながら、喜美子はもしや彼女の身寄りの者ででもあるのかと、尋ねてみたが、彼女はもう泣きやんできっぱり答えた。

「いいえ、全くの他人だけれど、でも、わたし、ほんとに好きなの。」

そして彼女は押っ被せてくるのだ。

「さあ、話して下さい。喜美ちゃんのこと、なんでも話して下さい。わたしも話すわ。」

おかしなことに、喜美子はもうどこか遠くにいて、私達だけがそこに取り残され、酔いつぶれかけていた。お上さんが銚子を持ってくると、桃代はくずれた姿態のままで言う。

「お上さん、許してね。わたしたち、喜美ちゃんに結ばれたのよ。喜美ちゃん、どこにいるの。連れて来てよ。」

来るものか、遠くに行っちゃった、と私は思うのだ。