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しろつばき

白椿

海若 藍平

「九州日報」1922(大正11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,775 字 · 6 页

青空文庫

只呆れてしまって、その児の様子を見ておりますと、その女の児は自分を見ながら、

「まあ、何という美しい花でしょう。そしてほんとにいいにおいだこと。これを一輪ざしに挿して勉強したいな。お母様に聞いて来ましょう」

と云いながらバタバタと駈けて行きました。

しばらくすると、ちえ子さんのお母さんが花鋏を持ってお庭に降りておいでになりました。

「まあ、お前が勉強をするなんて珍らしい事ねえ。お前が勉強さえしておくれだったら、椿の花くらい何でもありませんよ」

と云いながら、ちえ子さんの白椿をパチンと鋏切って、一輪挿しにさして、ちえ子さんの机の上に置いておやりになりました。

ちえ子さんは机の隅から見ていますと、女の児はさもうれしそうに可愛らしい眼で自分を見ておりましたが、やがて算術の手帳を出しておけいこを初めました。

ちえ子さんの白椿は、真赤になりたい位極りが悪くなりました。算術の帳面には違った答えばかりで、処々にはつまらない絵なぞが書いてあります。女の児はそれをゴムで奇麗に消して、間違った答えをみんな直して、明日の宿題までも済ましてしまいました。それを見ているうちにちえ子さんは、算術のしかたがだんだんわかって来て面白くて堪らず、自分でやってみたくなりましたが、花になっているのですから仕方がありません。