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しろつばき

白椿

海若 藍平

「九州日報」1922(大正11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,775 字 · 6 页

青空文庫

ちえ子さんは可愛らしい奇麗な児でしたが、勉強がきらいで遊んでばかりいるので、学校を何べんも落第しました。そしてお父さんやお母さんに叱られる毎に、「ああ、嫌だ嫌だ。どうかして勉強しないで学校がよく出来る工夫は無いかしらん」と、そればかり考えておりました。

ある日、どうしてもしなくてはならぬ算術をやっておりましたが、どうしてもわからぬ上にねむくてたまりませんので、大きなあくびを一つしてお庭に出てみると、白い寒椿がたった一つ蕾を開いておりました。ちえ子さんはそれを見ると、「ああ、こんな花になったらいいだろう。学校にも何にも行かずに、花が咲いて人から可愛がられる。ああ、花になりたい」と思いながら、その花に顔を近づけて香いを嗅いでみました。

その白椿の香気のいい事、眼も眩むようでした。思わず噎せ返って、

「ハックシン」

と大きなくしゃみを一つして、フッと眼を開いてみると、どうでしょう。自分はいつの間にか白い寒椿の花になっていて、眼の前にはちえ子さんそっくりの女の子が立ちながら自分を見上げております。

ちえ子さんはびっくりしましたが、どうする事も出来ませんでした。