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しろが
白蛾
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,700 字 · 22 页
決してお宅へ寄りはしませんから……。」
彼女は首垂れて、そして歩きだしました。そのゆっくりした歩度に彼は足を合せました。
暫く無言が続きました。その無言のうちに、彼は、彼女のうちにあるもの、表面的な一種の白痴美の底にひそんでいるものを、推測しかねました。彼は静かに言いました。
「お目にかかり初めてから、もう三ヶ月にもなります。そして……どうしたのか私は、もっとよく、あなたのことをいろいろ知りたくなりました。私からも、いろいろお話したいことがあります。日本では、男女の交際は、まだ、世間的にむつかしいかも知れませんが、お互に精神さえしっかりしておれば、咎むべきことではありますまい。そのうち、ゆっくりお目にかかれませんでしょうか。外をぶらぶら歩いてもよろしいし、どこかへ行ってもよろしいのですが……。」
言ってるうちに、彼は自分で嫌になりました。お千代さんは彼を勝手に引っ張り廻しました。彼も彼女を勝手に引っ張り廻すべきではなかったでしょうか。
「ねえ、どこかへゆっくり行きませんか。」
暫くたって、彼女は独語のように答えました。
「連れていって下さいますの。」
「ええ、行きましょう。