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はっけっきゅう

白血球

豊島 与志雄

「良婦の友」1921(大正10)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,538 字 · 24 页

青空文庫

新らしい家だけに、それがどうも不思議だった。

「この家は建ってまだ間もないらしいがね。」

「ええ、三年にきりならないんですって。」

秋子はそう答えながら、良人の眼付のうちに、何か力となるべきものを探し求めた。そしてそれが見出せないと、しまいにはやはり移転を主張しだした。

「だってあの刑事との約束もあるしね……。」

然し中井刑事からは、其後何等の音沙汰もなかった。こちらから聞きにゆくわけにもいかなかった。

思い惑って、二人で長火鉢の前にぼんやりしてると、晋吉は綾子と清とを相手に、玄関の三畳で影人形の遊びに耽っていた。兎や狐は固より陳腐だったし、飛行機やお化も倦きられていた。そしてはしきりに、新らしい人形に苦心していた。

「そら蝦蟇が出来た!」

晋作がそっと覗いてみると、晋吉は壁と睥めっこをして、四つん匐いになっていた。その恰好が変梃だった。

晋作はふと膝を叩いた。

「おい、僕が面白いものを拵えてやるから、じっとしてるんだよ。」

彼は其処へ進み寄って、袖をまくった両手を重ねてぬっと差出した。然し、晋吉の蝦蟇を呑もうとしてる大蛇の姿は、思うように壁面へ現われなかった。