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はっけっきゅう

白血球

豊島 与志雄

「良婦の友」1921(大正10)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,538 字 · 24 页

青空文庫

「お父さんは駄目だよ。」と晋吉は叫んだ。「お化の手附なら僕の方がうまいや。」

晋吉は両手でいろんな恰好をして、様々の幽霊の手附をしてみせた。

「嫌ですよ、坊ちゃまは。そんなことをなさると、今に本物が出ますよ。」

だが、慴えてるのは清ばかりではなかった。

或夜中に、突然の鋭い叫び声のために、晋作と秋子と綾子までが眠りから覚まされた。見ると、晋吉が其処につっ立っていた。没表情な顔で石のように固くなっていた。漸くにまた寝かしたが、物に憑かれたような眼を長く見開いていた。――影が無くなった夢をみたのだそうだった。自分の影がなくなって、何処に写しても出て来ないので、一生懸命にその影を探し廻ってると、急に恐くて堪らなくなったのだそうだった。

「影ばかりでなく、今に晋ちゃんご自分も呑まれてしまうわ。」

綾子が震えながらそんなことを云い出した。

ぞっとするような静けさだった。眠れないでいるうちに、柱時計が四時を打った。それから時計の振子の音が耳について、晋作は朝まで眠れなかった。

「俺まで何だか変だぞ。」

と気がついてみると、晋吉の夢が妙に気にかかった。女中部屋にいつも明るい電燈をつけ放しなのがいけないのじゃないかしら、とそんな馬鹿げた考えまで起った。