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はっけっきゅう
白血球
豊島 与志雄
「良婦の友」1921(大正10)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,538 字 · 24 页
三分……五分……そして男は立ち上った。老人はぐたりと頭を落した。眼を見張り口をあんぐり開いていた。男はそれを一目見やって、顔をそむけた。
男はやがて身形を直した。額の脂汗を袖で拭った。それから蚊帳の外に出て、押入の襖を静に開いた。中には四尺ばかりの空いてる場所があった。男は蚊帳の外から手を差伸べて、老人の足先を捉えて引きずり出した。それを両手で軽々と持上げ、押入の空いてる場所へ横たえた。それから押入の襖を閉め、蚊帳の中の布団の乱れを直し、兵児帯をまとめ、室の四方に恐ろしい眼付を投げて、慌しく出て行った。
凡ては、前から熟慮されたもののように、的確な段取りで速かに音もなく為された。ただ、押入の襖だけが二三寸閉め残されていた。
あたりは静まり返った。そのひっそりとした中に、向うの室から、時々何か低い物音が洩れてくるばかりだった。そして押入の中には、眼を見開き、口をうち開き、鼻から何とも知れない液体を出してる、老人の絞殺死体が、寝間着の胸をはたげ、手足をにゅっと伸して、固く冷くなっていった。それに蚊が群りついた。
柱時計が午前三時を打って間もなく、先刻の男がつかつかとはいって来た。