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はっけっきゅう
白血球
豊島 与志雄
「良婦の友」1921(大正10)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,538 字 · 24 页
それだけのことなら、どうせ女中部屋だからとて我慢も出来たが、越して来たその晩に、変に気味が悪いとかで、清は一寸眠れなかった。
「空気の流通がよくないからだろう。」
主人の晋作はそう云って、それでも念のために隅々まで検べたが、何処にも怪しい点は見出せなかった。
そして夕方、北向の高窓から射す日の光が、薄らとぼやけてゆく頃、秋子は何気なくその室にはいって、押入の前に佇むと、ぞーっと底寒い気がして、ぶるぶると身体が震えた。それが変に不気味だった。然し押入を開けてみても、清の夜具や荷物や、不用な道具などがはいってるきりで、少しも変ったことはなかった。気のせいだと思って、彼女はそれを黙っていたが、その晩も清は気味が悪くて眠れないそうだった。それ以後清は、玄関の三畳に寝ることにしていた。
そのことが、綾子の話とぴったり合った。
「あなた、どうもおかしいじゃありませんか。」
良人と二人の時、秋子はそう云って話の終りを結びながら、良人の顔を見守った。
額の両側の禿げ込みは可なり深くなってるが、口髯はまだ濃く黒々としている、その先をひねりながら、晋作は薄ら笑いを湛えて答えた。