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はっけっきゅう
白血球
豊島 与志雄
「良婦の友」1921(大正10)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,538 字 · 24 页
「その上本物のお化でも出たら、丁度お誂え向だね。」
「え?」
彼女には冗談が分らなかった。
「いやなに、本当の化物屋敷となればね、家賃がずっと下るからいいって訳さ。」
「まあ何を仰言るのよ、人が本気で話してるのに……全くあの室は少し変ですよ。」
「じゃあ、僕が一晩寝て見るとしようか。」
彼は生来の呑気さから、怪力乱心を信じなかった。そして、妻の話をいい加減に聞き流しながら、女中部屋で一夜を明かすという労をも固より取りはしなかった。
所が或る日、陰鬱な雨がじめじめ降り続いてる午後、その女中部屋で、けたたましい叫び声がした。座敷に居た秋子と台所に居た清とが、両方から同時に駆けつけた。見ると、窓の下に、こちらに背を向けて、晋吉が棒のようにつっ立って居た。秋子が真先に駆け寄った。晋吉は真蒼な顔をして、暫くは口も利けなかった。漸く口を開かしても、ただ窓の外を白い物が飛んだというきりで、詳しいことは更に分らなかった。彼自身も半ば夢心地だった。
「それごらんなさい、云わないことではありません。」と秋子は、勝ち誇った語気で、そしてそれをわざと不気味そうな表情で押っ被せて、良人に云った。