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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

に生った果物を籠に入れて差し上げに行くのだと答えました。これを聞くと紅矢は濃紅姫の事を思い出して、嗚呼これをもし自分の妹が受け取るのだったら、どんなにか嬉しい事だろうと胸が一杯になりました。併し今このお婆さんの忠義な心掛けにも大層感心をしまして、いよいよその疲れているのが気の毒になりまして、それでは自分も都からここまで散歩に来たもので、今から引きかえすのだから丁度いい、一所に馬に乗せて宿屋の在る処まで連れて行って上げようと勧めました。お婆さんは頻りに遠慮をしました。けれどもとうとう紅矢の親切な言葉を断り切れず、鞍の前輪に乗せられて都の方へ連れて行かれました。

紅矢はお婆さんが眼をまわすといけないと思いまして、わざとそろそろ馬を歩かせましたが、このお婆さんは中々話し上手で、紅矢の顔色の悪いのを見て、いろいろ親切に尋ねましたから、紅矢もうっかり釣り込まれまして、自分の心配の種の濃紅姫の事や、王様の御気性が荒々しくならせられた事、それからあまりの事に驚いて何が何やら解からなくなって、夢中に王宮を飛び出して、無茶苦茶に街中を駈けめぐって、夜通しの裡にここまで来た事、又この馬はこの国第一の名馬で瞬く間に千里走るという評判があるから、名を「瞬」