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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

。

青眼先生は、室の中に一人も居なくなりますと、やおら立ち上ってそこらを見まわしましたが、この室は扉を締めておきさえすれば、あとは只窓一ツしか無く、他に出入りする処はありませんから、悪魔は屹度あの窓から這入って来たに違いないと思いました。青眼先生はこれを見定めて、なおもその窓の外をよく見ようと思って、不図窓の縁に手をかけますと、その隅の処に妙なものを見つけました。それは三粒の美しい紅玉でした。

青眼先生はこの世の中にありとあらゆるもので知らぬものは無く、殊に宝石の事は詳しく知っていましたから、この三粒の紅玉を一目見ると、直ぐに、これは世にも稀な上等飛び切りの紅玉で、当り前の者が持っているものではないと思いましたが、扨誰が何のためにこんな処に置いているかという事は全くわかりませんでした。只もしかすると、これは悪魔が何かのためにした悪戯かも知れぬ。それならばなるべくいじらぬ方がよいと思って、そっくりそのままにしておきました。

その中に夜はだんだん更けて来ましたから、青眼先生は眠られぬ薬を飲みまして、只一人紅矢の枕元に椅子を引き寄せて座りました。そうしてその懐中には、悪魔を見たらば直ぐにも注ぎかけるために、別に一ツの薬瓶を用意して、その夜夜通しまんじりとも為ずに過ごしました。