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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
そうして取り次の者も待たずに勝手知った奥の方へズンズン這入って行きますと、今日は平生と違って王宮の中はどの廊下もどの廊下も鎧を着た兵士が立っていて、皆鞘を払った鎗や刀を提げて、奥の方を一心に見詰めながら、素破といわば駈け出しそうにしています。けれども紅木大臣はそんなものには眼もくれず、つかつかと奥へ進み入って、王様のお居間に参りましたが、そこには只玉座ばかりで王も女王もおいでになりませぬ。そうしてずっと向うの腰元の室から、思いがけない青眼先生の慌てた声で――
「女王様。お気を静かに。お気を静かに」
と云うのが聞こえましたから、扨はと思ってその方に急ぎました。
ところが腰元部屋の入り口に来て中を一眼見るや否や、紅木大臣は身体中の筋が一時に硬わばって、そのまま床から生えた石像のように突立ちながら、中の様子を睨み詰めました。
室の真中には綺麗な白木の寝台があって、その上には絹張りの雪洞が釣るしてありました。寝台の上には死人があると見えて、白い布が覆せてあり、寝台の四隅の足には四人の宮女と見える女が髪をふり乱して気絶したまま、グルグル巻きに縛り付けてあります。