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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
あとに残った藍丸王は、どっちとも解らず、只その声の為る方に迷い迷うて、いつの間にか只ある谷の奥深く、真暗な杉の木立の中へ這入って仕舞った。
その時は最早短い秋の日が暮れて、鳥の声も聞こえなくなっていたが、その代り真暗な杉の森の奥にチラチラと焚火の光りが見えて来た。その火を見ると今まで音なしく王を乗せて来た白馬が驚いたと見えて、急に四足を突張って動かなくなったから、藍丸王は馬から降りて手綱を放り出したまま、つかつかと焚火の側に近寄って来た。
見ると火の傍には四人の不思議な人間が、寝たり座ったりして火にあたっている。右の端に坐っているのは黄色い髪を垂らして、穴の無い笛を吹いている汚いお爺さんで、その次に寝ころんでいるのは絶えず振り子の無い木の鈴を振り立てている、眉毛も髯も無いクリクリ坊主である。
それからその端にうつ伏せに寝ころんでいるのは、瘠せこけて青ざめた、眼ばかり光る顔に、黒い髪毛をバラバラと垂らした女で、手には一冊の字も絵も何も書いて無い、白紙の書物を拡げて読んでいる。そしてその右には赤膨れに肥った真裸体の赤ん坊が座って、糸も何も張って無い古月琴を一挺抱えて弾いていた。