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ひゃくしょうやのすけのはなし

百姓弥之助の話

中里 介山

01 第一冊 植民地の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页

青空文庫

日本中の田畑を耕やすのに、何人入用かは計算できる。その人数を国民のうちから年々徴農するのである。

現在の専門農夫は、指導員、准尉、部隊長であつてよろしい。そのうちにだんだん、整理されていく。

今次の応召家族の間には、はき立てた秋蚕を棄てた家もあつた。秋の穫入れを老母と、産後の病妻とに託さねばならなかつた人もあつた。

吾々は米と麦とをたべて、日本の地の上に生活するのである。その主食物を各自の共力で収穫することは何より愉快である。

在郷軍人が、現役兵の話を聞いて昔を偲ぶごとくに、吾々は、毎朝米を食ふごとに、昔の服農を思ひ出すことができる。

農は百業の基である。吾等は地を離れて生活できない。

土に親しむことは青年修養の一つでもある。大自然の恩恵とその暴威とを知ることでもある。

常に日を拝む百姓では駄目である。日照、霖雨、風害には、これと戦つて勝つ機械化した農でなければならぬ。

それには、国民を総動員したる所のブレーントラストでなければならぬ。

実例は皇軍である。皇軍は人類平和のために戦つてゐる。常に備へられてある。

皆農は大自然と戦ふのである。大自然をして主食物を作らしめるのである。