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ひゃくあしちがい

百足ちがい

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页

青空文庫

……由平二は在宅で、すぐに又四郎と客間で対坐した。まえより色が黒く、眼がぎょろりとして、鼻の下と顎に濃い髭をたくわえ、そうして、まるでどこかの家主のように反りかえってみせた。

「多忙であるからして、むだな挨拶はぬき、簡単に用を云って貰おう、簡単に」由平二は日あしを見やって続けた、「――これから奉行職と会って食事をせねばならぬ、明日は三名の御老職に招かれておる、迷惑であるが、時間の浪費であるが、そこはやはり、……簡単に、用事はなんであるか、自分は多忙であるからして」

「用は簡単なんだ、五年まえのことを思いだして貰えばいい」

「――五年まえのこと、……なんだ」

又四郎は静かに大手門外の件を語った。あの蝗を使った教誨の件を、……苅賀はすぐ思いだしたらしい、だが相変らず反りかえって、こちらを睨んで、指の先で鼻下髭の端を捻った。

「――ふむ、それで、……それがどうした」

「あれから五年経つんだが」又四郎は低い声で云った、「――私はあのときの屈辱を忘れることができない、それで、あのときいた人間をすっかり集めたうえで、そこもとに陳謝をして貰いたいんだ」

由平二はもう一段と反った。