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えいきょ
盈虚
「政界往来」1942(昭和17)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,655 字 · 16 页
君の前にして裘を脱ぎ、剣を釈かずして食う。罪三つ。
それだけで丁度三件。太子は未だ我を殺すことは出来ぬ、と、必死にもがきながら良夫が叫ぶ。
いや、まだある。忘れるなよ。先夜、汝は主君に何を言上したか? 君侯父子を離間しようとする佞臣奴!
良夫の顔色がさっと紙の様に白くなる。
之で汝の罪は四つだ。という言葉も終らぬ中に、良夫の頸はがっくり前に落ち、黒地に金で猛虎を刺繍した大緞帳に鮮血がさっと迸る。
荘公は真蒼な顔をした儘、黙って息子のすることを見ていた。
晋の趙簡子の所から荘公に使が来た。衛侯亡命の砌、及ばず乍ら御援け申した所、帰国後一向に御挨拶が無い。御自身に差支えがあるなら、せめて太子なりと遣わされて、晋侯に一応の御挨拶がありたい、という口上である。かなり威猛高な此の文言に、荘公は又しても己の過去の惨めさを思出し、少からず自尊心を害した。国内に未だ紛争が絶えぬ故、今暫く猶予され度い、と、取敢えず使を以て言わせたが、其の使者と入れ違いに衛の太子からの密使が晋に届いた。父衛侯の返辞は単なる遁辞で、実は、以前厄介になった晋国が煙たさ故の・故意の延引なのだから、欺されぬように、との使である。