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かんごくべや

監獄部屋

羽志 主水

「新青年」1926(大正15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,909 字 · 12 页

青空文庫

立上って、谷口を睨め底力のある声で叱り付けた。「君は誰か、何故発言を妨げるか、今参事官閣下の言われた事が判らんか止めなさい」

と威厳ある一ト睨で、帝釈天は凹んで面をふくらせたのは、溜飲が下った。山本さんは更に主任達の方を向いて、

「今の妨害者は当現場の監督者側の人とすると、此際彼の様な挙動は、貴方達に却て不利益ですぞ」

と決め付けた。主任と閻魔と閉口しつつ弁解がましく、述立てようとするのを耳にもかけず、

「今の発言者、遠慮なく述べなさい」

之に勢づいた山田は感激に満ちて滔々と述べた、如何に無道徳で、如何に残酷で、如何に悲惨であるかを、実例を引き引き巨細に訴えた。一同は山田が自分達を代表して弁じて呉れるとして肯定の色に満ち満ちた。続いて淫売殺しの木村も案の定立ち上って喋舌ったが、弁舌では山田に及ばないが、例証を挙げることの綿密なのには誰も彼も「よくマア」と感服した。無論陳述は属官が、一語も洩さず速記して居る。一方主任連の凹み方ッたら無い。

勢を得たので七、八人の者が続いて訴えたが、其了ったのは三時にもなっただろう。スルと参事官が立上って、大体要領は得た、更に何か変った、新しい方面の訴は無いかと尋ねた。