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かんごくべや
監獄部屋
羽志 主水
「新青年」1926(大正15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,909 字 · 12 页
(一)
同じ持場で働いて居る山田という男が囁いた。
「オイ、何でもナ、近けえ内に政府の役人の良い所が巡検に来るとヨ」
「エッ、本当かイ夫りゃア、何時だってヨ」
「サア、其奴ア判ら無えがナ、今度ア今迄来た様な道庁の木ッ葉役人たア違うから、何とか目鼻はつけて呉れるだろう、何時も何時も胡麻化されちゃア返るんだが、今度ア左様は往くめエ、然し之で万一駄目だとなりゃ、此世は真暗闇だぜ」
「左様サ、何しろ役人位えにアビクビク為ねえ悪党揃だからナ、今迄の木ッ葉役人は瞞かされたり、脅かされたり、御馳走されたりで追ッ払われたんだが、東京から大所が来ると成りゃ、今度ア、其手じゃア往かねえ、何しろ一日でも早く来て、俺ッちの地獄の責苦を何とかして呉れなけりゃ、余命ア幾何もありゃしねえや」
「マア、厳重吟味して圧制な……」
突然に近い所で、巨い声がした。
「何奴だア、何ヨグズグズ吐きゃアある、土性ッ骨ヒッ挫かれねエ用心しろイ」
帝釈天と綽名のある谷口という小頭だ。
「仕事の手を緩めて怠ける算段計り為てけツかる、互に話ヨ為て、ズラかる相談でも為て見ろ、明日ア天日が拝め無えと思え」