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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

がたのお耳へいれぬようにと、のぶなが公のおこゝろづかいがござりましたので、たれいちにんも申しあげたものはないはずでござりますけれども、さらしくびにまでなりまして、しょにんのまなこにふれましたことゆえ、うす/\世上のとりさたをおきゝこみになりましたか、またはむしがしらせたと申しますものか、いつからともなくけはいをおさとりあそばしてきっと御しあんなされたらしゅう、それからは秀吉公がおこしになりますとかえってみけしきがすぐれぬようでござりました。なれども或る日、「えちぜんからはあれきりなんのたよりもないが、若はどうしたことかしらん、とかく夢みがわるいので気になります」と、ひでよし公へおたずねになりましたので、「さあ、いっこうに承知いたしませぬが、いまいちどおつかいをお出しなされましては」と、さあらぬていで申されますと、「でも、そなたが若をうけとりに行ったというではないか」と仰っしゃりましたのが、しずかなうちにもするどいおこえでござりました。こしもと衆のはなしでは、そのときばかりはお顔のいろまでがまっさおにかわって、ひでよし公をはったとおねめつけなされた