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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
のちには信長公の小姓をつとめられましたけれども、お元服まえはきよすにあずけられていらっしゃいまして、とき/″\おくがたの御殿へおこしなされたことがござりました。申すまでもござりませぬが、もと此のお児は浅井どのゝお家にとっては御主筋にあたられる江北のおん屋形、佐々木高秀公のおわすれがたみでござります。さればがんらいはこのお児こそ近江はんごくのおんあるじでござりますけれども、御先祖高清入道のとき伊ぶきやまのふもとに御いんたいなされましてから、御りょうないは浅井どのゝ御威勢になびいてしまいまして、御じぶんたちはほそ/″\とくらしていらっしゃいましたところ、せんねん小谷らくじょうのみぎり、のぶなが公が江北に恩をきせようとの御けいりゃくからわざ/\此のお児をおよび出しになりまして、小姓におとりたてなされたのでござります。こうねん、天正十年のろくがつ惟任ひゅうがのかみのはんぎゃくにくみして安土万五郎のともがらと長浜のしろをおせめなされ、まった慶ちょう五年の九月関ヶ原かっせんのおりには、大坂がたに裏ぎりをなされて大津にろうじょうあそばされ、わずか三千人をもって一まん五千の寄せ手をひきうけられました