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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

せいか、いや、あながちに、そのせいばかりでもござりますまいが、そのころおくがたはおい/\にお肥えあそばされ、いちじはずいぶんやつれていらっしゃいましたのに、又いつのまにかむかしのようにみず/\しゅうおなりなされました。おさとへおかえりになりました当座は、お肩のほねといちばんうえのあばらとのあいだに凹みが出来、それがだん/\ふかくなりまして、おくびのまわりなどひとしきりの半分ほどにおなりなされ、やせほそられるばかりでござりましたので、りょうじを仰せつかりますたびになみだにくれておりましたところ、三年目、四ねんめあたりから、うれしや日に月にわずかずつ肉がおつきなされ、七八ねん目には小谷のころよりもなまめかしゅうつや/\とおなりなされて、これが五人のお子たちをお産みあそばしたおかたとはおもえぬほどでござりました。こしもとしゅうにきゝましても、丸顔のおかおがひところほそおもてになられましたのに、このころはまた頬のあたりがふっくらとしもぶくれにおなりあそばし、それにおくれ毛のひとすじふたすじかゝりました風情はたとえようもなくあだめいて、おんなでさえもほれ/″\したと申します。