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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

名物である故、ぜひかえりにはみやげに持ってゆきたいとおおせられ、いよ/\御帰じょうのまえの日にふたゝびおんなごりの御しゅえんなどがござりまして、上々のしゅびにて御ほっそくなされましたとのこと。「あのときは内大臣どのも徳勝寺殿さまもほんとうに仲がよさそうににこ/\していらしって、わたしもどんなにうれしかったことか」などゝ、そんなおはなしをこま/″\とあそばされまして、「おもえばあの十日ばかりのあいだがわたしのいちばんしあわせなときでした。それにつけても一生のうちにたのしいおりというものはそうたくさんはないものだね」と仰っしゃるのでござりました。さればそのときはおくがたは申すまでもなく、御けらいたちも両家が不和になろうなどゝは考えてもみませぬことで、みな/\せんしゅうばんぜいを祝われたのでござりますが、ながまさ公が兼光のおん太刀を引出物になされましたについて、のちに兎や角申すものがありましたそうにござります。それはなぜかと申しますのに、右のおん太刀は御せんぞ亮政公御ひぞうのお打ち物でござりました由にて、いかにたいせつな御しゅうぎのばあいとはいえ、あゝいう