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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
えんどう殿はそのありさまを見てとって急にひきかえし、馬にむち打ちもろあぶみにて小谷へはせつき、人をとおざけてながまさ公へ申されますようは、それがしつく/″\信長公の御ようだいをうかゞいますのに、ものごとにお気をつけられることは猿猴のこずえをつたうがごとく、御はつめいなことは鏡にかげのうつるがごとく、すえおそろしいおん大将でござりますゆえとても此のゝち殿さまとの折り合いがうまく行くはずはござりませぬ、こよいのぶなが公はいかにも打ちとけておいでなされ、お宿にはほんの十四五人がつめているだけでござりますから、しょせん今のまにお討ちとりなされるのが上分別かとぞんじます、いそぎ御決心なされて御にんずをお出しあそばされ、おだどの主従をこと/″\く討ち取って岐阜へらんにゅうなされましたなら、濃州尾州はさっそくお手にはいります、そのいきおいにて江南の佐々木をおいはらい、都に旗をおあげなされて三好をせいばつあそばされるものならば、てんがを御しはいなされますのはまたゝくうちでござりましょうと、しきりに説かれましたそうでござります。そのときにながまさ公の仰せに、およそ武将となる